演劇

【90ミニッツ@パルコ劇場】

三谷幸喜生誕50周年記念興行ラスト。
タイトル通り、とある一室でおきた90分の出来事。
交通事故で運ばれてきた少年。
怪我はたいしたことないが手術が必要、手術するには輸血が必要、だが、彼の父親は信仰上の理由から輸血を拒否。
困った現場の担当医は整形外科の副部長に父親の説得を依頼する……
というストーリー。
冒頭に現実の事件とは関係ありませんと断り書きが出たのは、これが現実でもあった出来事だからなのでしょう。
父親と医者の望みは一つ。
少年の命を救いたい。
だけど、それにはどちらかの信念を折らねばならない。
信仰か医者の良心か。
90分の間、延々と相手を説得し罵倒し、自分の苦しい立場を説明し、どちらも折れることができず、やがて少年の命は消えていく……
その瞬間、先に動いたのはどちらだったのか。
これはある意味、観客それぞれの大切なものを計る芝居なのかもしれない。
まったく違う信念を持つ二人、そのどちら加担するかによって、自分の中の大切なものが見えてくるかも。
そして、信念を守りきったせいで一生後悔に苛まれることにもなるのだ。
人生は、まっこと難しい。

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【ロッキーホラーショー@神奈川芸術劇場】

俺たちのバイブルを見せてやる!
というチラシが配布されてから早2年。
劇団☆新感線演出いのうえさんと看板役者古田さん、彼らの原点でもあるこの芝居。
原作は映画でしか見たことないけど、ほぼ忠実に演出している気がした。
ど派手! 悪目立ち! お下劣! 不道徳!
はちゃめちゃでわけわかんなくて、でも、骨格はしっかりしているという、なるほど新感線の原点だなあと納得。
友人の結婚式に刺激された純情カップルが勢いで婚約し、恩師に報告に行く途中、エンジントラブルで立ち往生。
救助を呼ぶ電話を借りるためにやってきた古城……そこにいたのは、理想の人造人間を作り上げたばかりのマッドサイエンティストだったのだ……
役者さんでは、リフラフ役の岡本健一が最高。
よくあの役をジャニーズが許したなと思うぐらい、ハマってます。

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【ラブリーベイビー@東京グローブ座】

三組の同性同士のカップルと、一人の片思いの女の子。
仲のいい7人組は、主人公の父親が所有する山のホテルにシーズンごとに宿泊し、交流を深めている。
愛、裏切り、浮気、疑い、想い、そして大好き。
だが、主人公カップルの片割れが末期がんで亡くなってしまったことから、すべては崩れていく……
小説家である主人公は、死んでしまった恋人を女性に性転換させ、結婚し子供を作るというストーリーを綴り始めていく、という後半がわかりにくい!
他二組のカップルの動向が現実のものなのか、それとも、これも小説の中のものなのかが、はっきり提示されていないので、かなり混乱する。
しかも、一組のカップルはトンデモないところで終わりになってるし。
小劇系の手練の役者さんたちを集めたわりには、もったいない使い方をしているなあ演出という印象。
なんだか、いろいろと浅くて、ちょっと残念。

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【五月花形歌舞伎@明治座】

市川染五郎、市川亀治郎、中村勘太郎、中村七之助。
当代若手四人衆による花形興行。
これはもう行くしかありますまいまいまい、と明治座までノコノコ出かけたわけなのですが、なんと!
二部には亀治郎の出演はなしぃぃぃぃぃぃ!
まあ、6月に新国立の舞台に出るので、そっちの稽古があるのでしょう。
ちょっとがっかり。
二部のメインは「怪談牡丹灯籠」
新三郎に恋いこがれて死んだお露の幽霊譚は有名だが、その手引きをした下働きの伴蔵夫婦の因縁譚はあまり知られていないかも。
幽霊から百両もらい、魔除けの札をはがした伴蔵のせいで、新三郎は取り殺され、伴蔵夫婦はその金を元手に小商いを始める。
店は順調に行き、そうなると更に欲が出るのは人間。
伴蔵はお国という女に懸想し、ついには邪魔になった女房お峰を自ら手にかける。
とまあ、お国もお露の主君筋にあたる家のおとり潰しの原因を作ったりと、かなりこんがらがった因縁話なのであります。
伴蔵を染五郎、お峰を七之助、語り手として勘太郎が出演。
怪談なのに笑いを誘う場面もあり、それがまた上手い!
そして、歌舞伎らしい凄惨美に満ちた殺害シーン。
いやホント、歌舞伎ってけっこう人殺し場面多いですよね。
まあ、そこが見所なんだけどさ。
七之助の年増女は初めて見たけど、これがすごくいい!
お姫様よりもいいかも。
すごく贅沢な時間を過ごせてしまって、有り難い。

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【港町純情オセロ@赤坂ACTシアター】

新感線がシェイクスピアをやる!
というわけで「リチャード三世」の時と違い、今回は、舞台を戦前の関西に移しての翻案芝居。
でも、これがおっそろしいほど、オセロそのもの。
まったくのオセロ、登場人物が日本人でもまったく違和感なし。
むしろ、最初からこういう芝居だったんじゃなかろうかと思うぐらい、うまく融合させていて、脚本の青木豪さんの実力に唸る。
うむむ。
演出もいつもの新感線とはちょっと違っていて、青木豪×いのうえひでのりコンビに芝居は、1月の劇団おにぎり旗揚げ公演で見ていて、その時、アレ?と思ったことが、更にパワーアッブされてこの舞台に反映されてる気がする。
いつもよりお下劣で血糊バシバシ飛ぶとか、そういうわかりやすいところもそうだけど、真っ芯は全然変わってないけど、その芯を取り巻いている柔らかい部分が少し変わってきたかなと、そんな感じ。
しかも、その変わって来方が若返っているのだから、タチが悪い。
さすが、いのうえさん!
客演役者さんと劇団員も、微妙な違和感を残しながら融合しているのが、また味わい深くていい。
結成30年を超えた劇団なのに、まだまだ新しいことができる余地があるというのが、新感線の強みであり唯一無二の凄いところなんだろうと思う。
面白かった!

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【断食@座・高円寺】

村木仁・市川しんぺー・池谷のぶえの三人組演劇ユニット「おにぎり」旗揚げ公演。
脚本・青木豪、演出・いのうえひでのり、という超豪華スタッフを迎え、劇場もオシャレな座・高円寺。
新感線いのうえさんは、何十年かぶりになる小劇場の演出で、いつものケレン味あふれる演出は封印し、軽やかでエグミのある小劇場系演出に徹していたのが、すごい。
もう海から魚が獲れない時代。
もしもの為のスペアとしてのクローン保険が存在している。
高校を卒業してから故郷に戻っていない主人公の元に、クローン保険会社からの社員がやってくる。
死んだ母親が契約していたクローン保険、母親のクローンの処遇を決めねばならないからだ。
処分か解放か。
人権を認められていないクローンは、処分という名で殺されるのだという。
親孝行をしていなかったことを悔いている主人公は、滅多にない「解放」を選択し、人格のないクローンと同居生活を始めるのだが……
なんつーか、一言では語れない芝居。
鬱屈した時代、そこであがきながら暮らしていく人々、海からはもう魚は獲れない、食卓にのぼるのは金目鯛に似たナニか。
ベテラン役者&スタッフが今更ながら、小劇場にこだわる理由は?
見終わった後にずっとモヤモヤが続く。
解決しないナニかがずっと。

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【ろくでなし啄木@東京芸術劇場】

三谷幸喜、生誕50周年企画作品第一弾。
今年は三谷幸喜50周年ということで、七つの作品がそれぞれの形で公開されるそうで、その第一弾は石川啄木を主人公にした心理サスペンス。
てっきり、三角関係の恋愛モノだと思っていたら、心理サスペンス……人間の業は深いのですな。
かつて石川啄木と同棲していた女給と啄木の友人が、啄木の没死数年後再会する。
彼らが一回だ行った旅行、最初で最後になったその旅行の一夜、そこではいったい何がおこっていたのか?
三人それぞれの視点から見た出来事を、順番に語っていくという構成。
矛盾点から明らかになる、ある策略。
自暴自棄で人生のどん詰まりだった啄木が、その朝目にした光景とは。
女給も友人も、三谷幸喜の創造であり想像。
実際にはなかった物語を、実際以上にリアルの作り上げてしまうのは、三谷幸喜の才能。
そして、役者三人の才能。
個人的には、勘太郎目当てに行ったので、勘太郎が素晴らしくてよかった。
お人好しのテキ屋という難しい役所を、チャーミングに演じ、一瞬かいま見せる刹那的凄みが、いい人だけで終わらない匂いを放っていたように思う。
50周年幕開きに相応しい舞台。

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【時計仕掛けのオレンジ@赤坂ACTシアター】

キューブリック監督の映画はすでに、古典的名作と言われているが、原作者との間に確執があったことはあまり知られていない。

ラストが気に入らなかった原作者は、のちに自ら戯曲を書き、舞台を上演し憂さを晴らしていたらしい。

というわけで、戯曲を元に演出の河原さんが上演台本を書き、更にパワフルに、ますます過激に、まったく楽屋落ちも含めて、ギラギラしたすごい舞台に仕上げてきたのだった。

近未来、スラングを操る十代の残虐な少年たち。

彼らは若いということを武器に、やりたい放題に暴れ回る。

特にリーダーのアレックスの極悪非道振りはひどく、強盗レイプ挙げ句のはては殺人。
仲間に愛想を尽かされ、刑務所送りになってしまう。

娑婆に出たい一心のアレックスは、新しい矯正システムがあることを知り、それに志願する。

そのシステムが、反暴力の強制洗脳システムだとも知らずに……

という、前半の暴力描写から一転して、後半は人格破壊され運命に翻弄される主人公。
演技の振り幅の広いこの役を、小栗旬が好演。

共演のベテラン陣も、しっかりと奇妙な役をこなし、空疎な明るさと未来への静かな予感を感じさせる舞台。

ラストについては賛否両論もあると思うけど、映画版みたいな終わり方を生の舞台でされると、なかなかヘビィだと思うので、人は少年から大人になるというラストは、よかったんじゃないかなと思います。

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【大人は、かく戦えり@新国立劇場】

子供同士のケンカに親が出て、修羅場と化す。
簡単に言えば、そういう物語。
友達の前歯を2本叩き折った子供と、叩き折られた子供、その親×4人。
被害者夫婦宅に呼ばれた加害者夫婦、最初は大人らしく和やかに話し合いをしていたのだが、子供に謝罪させるかどうかで意見が割れ始める。
暴力をふるったのはイジメられたからだと主張する加害者と、暴力をふるったこと自体を謝るべきだと言う被害者。
小売店社長の夫&インテリ正論の妻、やり手弁護士夫&専業主婦の仁義泣き戦いが始まった!
親であり、妻であり、夫であり、男であり、女であり、そしてまたそれぞれ主張のある人間である。
“大人”という仮面に隠されていた剥き出しの本能、それは子供?
ついには、酒の力を借りての大暴れ、とんでもない方向に事態は進んでいく……
演技手練による四人芝居。
一時間半という小品もあって、軽く楽しい時間が過ごせる芝居。
でも、じっくり思い返すと、いろいろと身につまされるかも。
大人をやるのも大変だ。

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【母を逃がす@本多劇場】

大人計画11年めの再演。
もう11年かぁ……と時の長さに愕然とするのだけど、この11年間で大人計画を取り巻く環境は大きく変わった。
初演の時点でもう人気劇団だったけども、今は劇団よりも個々が有名になってしまって、別の意味で人気劇団になってチケットが取れない。
しかし、11年たっても大人計画は大人計画のままで、キャストもほとんど変わらず、演出もセットも衣装までも初演と変わらないので、懐かしいような新しいような、妙な気分だった。
自給自足のコミューンを舞台に、コミューンを立ち上げた頭目一家と、現実世界から弾き出された人たちが醸し出す、ほろ苦い生活の物語。
頭目を継がねばならない主人公は、外から嫁にきた母親を外の世界へ逃がすことに執念と情熱を賭ける。
少女を殺して逃亡してきた二人組の男に金を出し、母親を連れ出してくれるように頼む。
一方、狭いコミューンの中の人間関係には歪みが出てきていた。
その歪みは次第に、頭目殺しに傾いていくのだが、頭目に多額の保険がかけられていたため、保険会社の職員が暗殺計画を潰しにかかる。
閉塞した空間、濃密な人間関係。
逃げたい、逃げられない、逃げたくない、逃げ出せない。
やがて、おきる一つの奇跡。
でも、その奇跡もまた、タダの生活の一つであるのだ。
少し笑って、少し怒って、おおむねつまんなくて、のみこんでのみこんで、そして……生活は続く。

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